私がいるこの街
既に森は崩され
川は濁り
大気は淡くグレーに霞む
こんな場所にも
虫の音響く
変わらない月が照らす
諦めずに生きて
そんな声が
そこかしこから聴こえてくる
そう
決して諦めずに生きればいい
君たちが住む場所を追われ
絶望の果てに死んだなら
きっと悲しい世界が待っているから
私が死んだなら
絶望に飲まれ
ただ生きていることに意味なんか模索し
疲れ果てて死んだなら
何か変わりますか
あっというまに忘却され
このひと時の淡い憂いは
渦巻く四次元の中に消える
子を残していない私は
その欠片すら未来に残さず
消える
貴方すら
私を忘れるでしょう
いつか誰かを求め
そして誰かに求められ
過去ではなく
まだ見ぬ未来に思いを馳せるでしょう
それはいいよ
それはいいんだ
でも
こんな虫の音響く
満月の夜には
せめて
私の声を
私の肌を
思い出してほしい
浮かんでは消える
儚い陽炎ほどの記憶でもいいから
どこかに私を
生かせてほしい