冬の日
慌ただしく行き交う人混みの中で
私はヘッドフォンを耳にあて
ピアノの音色を聴いていた
癒えない傷と悲しみを
貴方の記憶と共に抱いて

空は意識が遠退くような紺碧色で
遠くに微かに瞬く星に
私はそっと手を伸ばした
掴めない記憶は
もはや私自身の創造物で
この世界の何処にも救いがないことに
私は気づいていた

死の向こう側にいる貴方が
両手を広げて私を迎えてくれる
弾けるような笑顔で
貴方は私を迎えてくれる