忘れていたこと

僕は昔


すごく田舎に住んでいた


なんだろう


もののけ姫に出てくるような


集落?


それとも


大きな一つの家?


なんだかよく思い出せないけど


確かにそこにいた


おばあちゃんだか、ひいおばあちゃんだか


僕は大切にされていた


僕の幼い頃の断片的な記憶は


次に保育園に通っていた頃に飛ぶ


保育園の


フェンス。


其れの向こう側に


不思議な実を付けた雑草があった


すごくすごく小さな西瓜のような


僕はそれを獲ろうと


金網の隙間に手を入れる


後から保母さんの声がする


記憶はここまで


次は小学生に飛ぶ


嫌がらせをされている


すごく悔しくて


ある日切れる


今では想像できないような


酷い言葉を言う


それ以来嫌がらせはなくなった


でもその頃から


僕は一人を好むようになった


そこからは記憶が鮮明になる


中学生


初めてセックスをした


罪悪感に押しつぶされそうになった


でも、


誇らしくもあった


自分は一人の大人になったような


でもその頃の僕は


他人を愛する余裕はなくて


自分を愛することだけで


精一杯だった


高校生


初めて他人を愛した


自分よりも愛していると思った


すごく恐ろしい気持ちになった


この人を失ったら


僕はどうなってしまうのだろう


生きていくことすら


苦しく困難だ


結局その人とは長く続かなかった


でも


僕は特に変化なく


平凡な日常を過ごした


僕は薄情者だ


結局、自分を愛する以上に


他人を愛せないじゃないか


そう思った


その頃にはもう


僕に幼心は無かったように思う



僕の短い歴史の中で


ぽっかりと抜け落ちている記憶がある


それは当たり前すぎて


気付けていないだけだったけど


結局は忘れていた


僕の周りには常に誰かいて


そしてその人達に愛されていた


僕は誰よりも恵まれていたんだ


僕を愛してくれる沢山の人達に


僕はなんて仕打ちをしてきたのか


どうにかやり直せないだろうか


どうにか謝れないだろうか